座談会「ISCHEMIA試験を読み解く」

「ISCHEMIA試験を読み解く」

座長

伊苅裕二先生(東海大学医学部 内科学系 循環器内科学 教授)

横井宏佳先生(福岡山王病院 循環器センター長)

 

 

ISCHEMIA試験の紹介
香坂 俊 先生(慶応義塾大学)

はじめに

2020年4月の「New England Journal of Medicine」に、ISCHEMIA試験の結果が掲載された。ISCHEMIA 試験(www.ischemiatrial.org)は世界37か国320センターで5,179名の参加者を集めて実施され、中等度から重度(10%以上)の虚血が証明された安定狭心症例 への冠動脈カテーテル治療(PCI)や冠動脈バイパス術(CABG)による侵襲的治療 と 至適薬物療法(OMT)の二つの治療戦略を比較している。結果はこのグラフが示す通り(図1)、侵襲的治療群(Invasive arm) と保存的治療(Conservative arm)において、前半はやや保存的治療が有利であり、トータルで後半は侵襲的治療群が有利であるものの有意差は認められないという結果であった。これをどう解釈するかが世界的に大きな議論であり、同号に掲載されたElliott M.Antman, M.D.とEugene Braunwald, M.D.によるEditorialでは、「ガイドラインに下された投薬治療を遵守でき、この試験の対象に当てはまる患者の場合、最初に保存治療を選んでもいいのではないか」と述べられている。医療費に大きなインパクトを与えうる結果であり、米国ではニューヨークタイムズやワシントンポストなど主要紙が大きな見出しで取り上げられ、非常に注目されている。図1

ISCHEMIA試験の注目すべき点

注目の理由の一点目は、安定狭心症に対する治療のパラダイムシフトである点だ。歴史的に急性冠症候群への早期カテーテル治療の有効性が証明され、それをもとに安定狭心症に対しても早期にカテーテル治療が積極的に行われていたが、そもそも全く違う特徴を有する疾患なのではないかということがCOURAGE試験以降いわれるようになった。そこで、安定狭心症に対する早期カテーテル治療の有効性を見直すべきではないかという機運が高まりつつあることがISCHEMIA試験の背景にはある。
二点目は、今回のCOVID-19でも明らかになったとおり、医療のリソースは人的にも金銭的にも有限であることを社会が認識してきたということである。有限である中で、虚血性心疾患の診療に、どれだけお金を投与することができるか。特に米国においては循環器疾患の治療にかかる費用がダントツ一番であるため、社会的にも注目が集まった。それにより、ISCHEMIA試験は、8年間で8,400万ドル(80~90億円)という巨額の研究費をNIH(アメリカ国立衛生研究所)から獲得しており、研究結果によってはそれを上回る500億円程度のベネフィットが得られるのではないかという試算もある。
三点目は、個人的な意見になるが、侵襲的な手技を行うインターベンション医として、自分が行った手技が、あるいは自分の領域で行われている手技が、本当に正しいのか常に問い続ける姿部を宿命的に持っていることが大きいかと思われる。PCI やCABGといった侵襲的な手技をずっとランダム化試験の検証なく行って良いのか、そうした現場からの疑問に応えられるデザインになっている点が評価されている。

ISCHEMIA試験の内容

ISCHEMIA試験の特徴は、単純なカテーテル治療、薬物治療といった比較ではなく、診断戦略の中で侵襲的治療を早めに行うか、それとも症状・状態に合わせて行なっていくかという、戦略を決める領域の試験というところである。従って保存的治療群の場合、侵襲的な治療をしないわけではなく、最初に戦略として外来でのOMTと決め、その後は通常診療を実施し、適応があればPCIを行うこともあるということだ。
ISCHEMIA試験は、中等度から重度(10%以上)の虚血が証明された安定狭心症例を対象としており、選定方法は、すべての症例において参加施設からコアラボに画像を集めて、コアラボが10%以上かどうか客観的に評価した。その後ブラインドされたCTを行い左冠動脈主幹(LMT)病変症例が除外された。そのため、日本でリクルートした症例に関しても、インフォームド・コンセントを実施した上で画像データをコアラボに送り、参加施設側は医師も患者も結果はわからないといった徹底した管理体制で行われた。試験の主要評価項目は、心血管死亡、心筋梗塞、不安定狭心症による入院、心不全、そして心肺停止であった。副次評価項目として設定されていたQOLの解析は今後報告される予定である。心血管死亡に関しても、参加施設が判断するのではなく、カルテのコピーの翻訳をコアラボに送付し、コアラボが死因を判断するという形であった。
最終的に8,518名がエンロールされ、5,179例が無作為に割り付けられ、2,588例が侵襲的治療群、2,591例がOMT群となった。侵襲的治療群は、コアラボで10%以上の虚血が証明され、LMT病変ではなかった場合、およそ1カ月以内に診断カテーテル検査を行い、その結果PCIやCABGが必要であれば3カ月以内に実施するという流れであった。保存治療群は、画像検査や入院治療を強制せず、OMTを続け、患者の症状のコントロールをメインとした。両群ともフォローアップ期間は3.3年で、フォローアップ率が99.4%、99.7%と非常に高かった。平均年齢は64歳で糖尿病の方が約4割、左室駆出率は平均60%程度、狭心症の症状ありが90%程度であった。この平均年齢は、日本のみ、また日本・韓国・中国の集計をした場合には、15歳ほど上になるだろうと考えており、日本、アジアの患者は、世界とは少し様相が違う可能性がある。

実際ISCHEMIA試験で行われた侵襲的な介入(図2)をみてみると、赤線の侵襲的治療群では95~96%で診断カテーテル検査が行われ、80%でカテーテル治療が行われていた。一方で青線のOMT群では、5年間の間におよそ3分の1で何らかの理由によって診断カテーテル検査が必要になり、そのうちおよそ3分の2程度でPCIかCABGを実施されていた。先述のとおりOMT群でも適応があれば侵襲的治療を行うという特徴の試験であるため、クロスオーバーではなく、OMTでフォローしていったところ結果的に侵襲的治療が必要になった方が23%いたとみるべきであろう。

 

ISCHEMIA試験の結果

結果は、冒頭に示した通り、主要評価項目に対して、前半では侵襲的治療群で発生率が1.9%高く、後半では侵襲的治療群で2.2%発生率が低いが有意差には至らないという結果になった。心血管死亡と心筋梗塞のみに絞った場合も主要評価項目と同様の結果となっており、これらをどう解釈するかが今後の議論のポイントであろう(図3)。

現在までで報告されているサブグループ解析でも有意差が出ているものはなく、一枝、二枝、三枝病変いずれでも差がなく、虚血の程度によっても明確に差が出ているものはない(図4)。
さて、冒頭で示した主要評価項目のグラフの前半において、侵襲的治療群におけるイベント発生率が高かった。この理由を検討するために心筋梗塞のタイプ別に解析をしてみると、手技由来の心筋梗塞(Type 4a, 5)は侵襲的治療群で高く、自発的な心筋梗塞(Type 1, 2, 4b, 4c)では侵襲的治療群で抑制されているようであった。一方で、後半に侵襲的治療群で発生率が低くでているが、この差が今後開いていくのか、閉じるのかは興味深く、ISCHEMIA EXTENDという追加試験が実施されることとなり、再同意が得られた症例は長期的なフォローを行い明らかにしていく予定である。

日本でのマッチングは?

では、ISCHEMIA試験のセッティングが日本の臨床にどの程度あてはまるのか、慶応義塾大学病院のデータベースにあてはめてみると、77%の中等度、重度虚血症例がISCHEMIAの対象になるとの結果であった。除外されたのは、LMT病変、慢性腎臓病、心不全の入院歴などがみられたが、こうした症例では予後が悪くなることが多いため、そういった症例にISCHEMIAの結果が当てはまるかどうかは今後慎重に見定める必要がある(図5)。

 

QOL解析

そして、症状の改善という視点でみてみると、観察期間を通して症状の改善度は侵襲的治療群で強かった。侵襲的治療群においても、全員が症状改善するわけではなく、症状が頻回に起きる場合に改善度合いが顕著であった(図6)。

最後に

今後のカテーテル治療はどうなるのか、三点にまとめたい。①安定狭心症のPCIの適用はより厳密になる。自身の外来でインフォームド・コンセントを行う際にもずいぶん安定狭心症に対する見方が変わってきている。「様子を見ながら考えていきましょうか」といった形で、外来で何回か顔を合わせながらPCIの適用を考えていくというスタイルに変わってきた。②症状の取り方を考えていく必要がある。虚血の程度と症状が必ずしも相関しないという感触があり、違うベクトルで捉える必要性をISCHEMIA試験以降感じている。③カテ職人がいるのなら、OMT職人がいてもよい。安定狭心症という領域にISCHEMIAはメルクマールになる臨床試験であり、この結果をどのように解釈し、

普及させていくか、CVIT等でも今後議論していきたい。

 

ISCHEMIA試験を臨床現場に如何に外挿するか?

PCI施術の視点から
上妻 謙 先生(帝京大学医学部附属病院 循環器内科)

2,588例の侵襲的治療群の背景に注目し、PCI施術の観点からISCHEMIA試験を考えてみると、以下がポイントとしてあげられる。

・侵襲的治療はPCI:CABG=3:1である。
・三枝病変が45%である。
・使用されたステントの98%が第二世代DES(Xience, Resolute)。
・5%以上のステントデリバリー失敗。
・早期に侵襲的治療群でイベントが多かったのは、周術期の心筋梗塞。
・その後に発生する心筋梗塞はOMT群で多かった。
・周術期心筋梗塞を抗血小板療法、側枝保護、イメージングなどで最大限予防することでPCIの成績をさらに向上させることが重要。
・慢性冠症候群から急性冠症候群への移行をPCIが予防できるポテンシャルが示された。

三枝病変が多い点、PCIとCABGの比率、使用されたステントの種類に関しては、現代の重症虚血症例に対する治療として、ISCHEMIAのデータは外挿できると考えられる。しかし、5%以上のステントデリバリー失敗がある点に関しては、術者側の改善の余地が考えられる。また、早期に侵襲的治療群でイベントが多かったのは、周術期の心筋梗塞であったため(図7)、これをいかに減らすかを術者が考えることが重要であり、そのキーになるのが、抗血小板療法、側枝保護、イメージングによる血栓症、塞栓症の予防である。日本では、IVUSをほとんどの症例で使用しており、側枝保護を積極的に実施しているため、さらに良い結果が期待できるのではないか。最後に、慢性冠症候群から急性冠症候群への移行をPCIが予防できるポテンシャルが示されたと考える。

虚血評価の立場から
松尾仁司 先生(岐阜ハートセンター)

ISCHEMIA試験とよく比較されるFAME 2試験。この2つを対比させながら、ISCHEMIA試験について考えたい。ISCHEMIAはinterventional cardiologistにとってネガティブなデータで、FAME 2はポジティブなデータというように解釈されることが多い。2つの試験の異なる点は以下の点にある。①FAME 2ではFFRを計測してからPCI群とFFR群に割り付けられるため、FFR計測は必須で、虚血のある病変を1対1にランダム割り付けしているのに対して、ISCHEMIA試験ではFFR測定を虚血が同定されていない病変に対しては推奨されているのみで必須ではなく、結果的に20%程度の症例にしか使われていない。②FAME 2ではPCI群は死亡心筋梗塞には有意差はなく、緊急血行再建のみで薬物療法群がPCI群に比較して有意に多いという点で、ISCHEMIA試験との違いはない。③FAME 2では薬物療法群で緊急血行再建を行った17.2%、ISCHEMIAでは薬物療法群の血行再建は4年間で23%であり、多枝疾患がISCHEMIA試験で多いことを考慮すると妥当な結果と考えられる。③症状軽減効果は、FAME 2でもISCHEMIA試験同様に、PCI群の方が有意に高いことが示されている。両試験ともに、死亡、心筋梗塞は有意な減少はないが、症状がある人に関しては狭心症軽減効果があるいうことを示している。しかし一方で、症状にはプラセボ効果があること、それから、FAMEⅡのサブ解析から、無症状であることが予後不良であることが報告されている点も留意する必要がある。世界で唯一のPCIの2重盲検試験であるORBITA試験においても、虚血重症度が唯一、負荷エコーでの壁運動異常改善効果に関連する因子として同定されている。以上より安定狭心症においても、虚血による客観的評価の重要性は変わらない。慢性虚血症候群においても、虚血重症度、血行再建リスクを十分に吟味した上で、血行再建が最も有効である症例を選択すべきである。この点においてはISCHEMIA試験の結果が大きく臨床現場の慢性冠症候群に対する治療方針を変化させることはないと感じている。虚血責任病変を正しく同定し治療することが、インターベンション医のすべきことである点は変わらない。

冠動脈CTの観点から
川﨑友裕 先生(新古賀病院)

本邦では冠動脈CTが登場して以降、年々その施行件数が増えている現状にある。今回冠動脈CTの観点からISCHEMIA試験について考えてみた。ISCHEMIA試験では患者選択時に冠動脈CTが撮影されているものの、重篤な心事故につながる可能性のあるLMT病変の除外と非有意病変の除外にのみ使われており、冠動脈CTによる病変性状の評価はなされていなかった。冠動脈CTのメリットの一つは将来的に急性冠症候群(ACS)を生じる可能性のある不安定プラークを検出できることであり、最近ではFFRctによる機能的評価を加えることで将来的なACS発症の予測が可能であることも示されている(図8)。

また SCOT-HEART試験では安定冠動脈疾患患者の検査に冠動脈CTを行うことでICA/PCIを増やすことなく5年後までの心血管イベントを有意に低下させたことが示され、冠動脈CTにより狭窄度だけでなく病変性状を把握することで適切なタイミングでのPCIまたは積極的なOMTなどの判断がなされたことが短期・長期的な予後改善に繋がった可能性が示唆されている(図9)。このようにISCHEMIA試験では行われていない冠動脈CTによる病変の性状評価を行うことで、より厳格なリスク管理や適切な時期でのPCI/CABGの治療介入ができ、長期的には心血管イベントの発症予防に繋がるなど、冠動脈CTのメリットが大いに活かせるのではないかと思われる。

 

OMTの視点から
阿古潤哉 先生(北里大学)

ISCHEMIA試験のOMTは、基本的には安定冠動脈疾患に対する各国および国際的なガイドラインの重視が目的になっている。そこで、具体的にISCHEMIA試験で用いられた投薬治療(図10)をみてみると、侵襲的治療群、OMT群両方とも抗血小板薬、あるいは抗凝固が100%、スタチンは95%服用している。中でも脂質低下療法に関して注目すべき点は、日本では使えない高強度スタチンの量が使われていることがわかる。

また、ISCHEMIA試験以降に心血管イベントへ効果が証明された薬剤は増えているため(図11)、ハードエンドポイントで有意差を出すのはさらに難しくなり、OMTの重要性は改めて強調されるのではないかと考える。
次に、ISCHEMIA試験におけるLDL-C、HDL-C、HbA1cの数値をみると厳密にコントロールされていることがわかる。例えば開始時のLDLコレステロールが80を越えていたが、最終値では64まで下がっている。かなり厳しいコントロールがこの臨床試験では行われている。一方日本の現状として、当院の二次予防のデータをみたところ、2002年から2010年の平均LDLコレステロールが約91、2016~2017年で約87であった。従って、日本において同じ安定狭心症の二次予防の場合、本当にISCHEMIA試験と同等レベルにイベントが抑えられるかということは今後も十分に検討する必要がある。また、OMTをしっかりやらないと、イベントを起こす可能性があると考えられる。

総合ディスカッション

出席者: 伊苅裕二先生 横井宏佳先生 香坂 俊先生 上妻 謙先生
松尾仁司先生 川﨑友裕先生 阿古潤哉先生

優先順位について

伊苅 演者の先生方、ありがとうございました。さて、総合討論で皆さんからご意見をいただきたいと思います。横井先生からいきましょうか。横井先生、どうぞ。

横井 そうですね。いろいろな角度からISCHEMIA試験に関してお話をいただいたので、内容を読み解くだけでなく、どう明日のインターベンションにつないでいくかが見えてきたように思います。ISCHEMIA試験を踏まえた上で先生方にお聞きします。慢性冠症候群で外来に来られた方に、運動負荷試験、負荷心筋シンチ、冠動脈CTを、どのように優先順位をつけて行うかを聞きたいのですが、その前に香坂先生に質問です。ISCHEMIA試験では虚血評価に用いたモダリティは、75%が負荷心筋シンチで、残り2割程度が運動負荷試験でした。このような検査で10%以上の虚血がある患者さんに冠動脈CTを撮影したところ、14.5%が冠動脈に有意狭窄がなかったとあり、虚血の評価方法そのものに限界というか、何か問題があったのではないかと思うのですが、その点いかがでしょうか。

香坂 おっしゃるとおりです。ISCHEMIA試験は、米国の環境を元に行われた臨床試験でして、日本の先生方からCTについてたくさん質問をいただいています。米国の診療スタイルの中で検証された結果だということを念頭に、データを慎重に見る必要があるかと思います。今後FFRctや他のモダリティが増えていけば、違う診療の戦略として取り上げる必要があるのでは、というところはISCHEMIA発表後も議論されています。ただ、米国では、FFRでもFFRctでも恐らく再現できる結果は一緒なのではないかという論調が強いのに対して、ヨーロッパではCTをもっと上手に使えばもう少しわかることもあるという声が上がってきています。

伊苅 香坂先生、ありがとうございます。それでは横井先生からの質問で、運動負荷試験、負荷心筋シンチ、冠動脈CTを、どのように優先順位をつけるか、各先生お願いします。

上妻 ISCHEMIA試験では症状を元にしていますが、症状だけでは、患者の訴え方も様々で、対応する医師側の経験や聞き取るスキルの差があるように思うので、医師側のトレーニングも必要かとは考えています。最初に行う試験としては、withコロナの時代に、運動負荷を最初に行うのは難しくなっており、CTをまず行い、中等度病変があればFFRctというフローがスムーズです。腎機能が悪い、喘息などの造影CTを撮りにくい場合は、負荷心筋シンチでしょうか。

松尾 私たちの施設でも、負荷心筋シンチ、CT、一時的にFFRctも行っていました。負荷心筋シンチを実施する方は、高齢、フレイル、腎機能障害、この3つがキーワードでしょうか。若年でリスクファクターが多い方は、まずはCTで、プラークの性状を見ていますね。

阿古 今までは、症状が強い方は診断カテという流れでしたが、今は先に負荷心筋シンチを行うか、ISCHEMIA試験の結果と、FFRctが使えるようになってきたことを受けて、CTを診断に積極的に使うように変えようかと検討しているところです。

川﨑 当院ではガイドライン(図12)に沿って、CTを最初に実施する先生が多いですね。高齢者が多くて運動負荷で負荷をかけにくいという現状もあり、また負荷心筋シンチは検出漏れすることが多いですね。従って負荷心筋シンチを行って漏れると形態評価ができなくなってしまいます。そのため、CTを第一選択でやることが多いかなと思います。

伊苅 ありがとうございます。私のところは、これまではCTは陰性的中率が高いので違うかなという症例の評価に使っており、虚血かなと思うと負荷心筋シンチで虚血を証明していました。しかし、FFRctができるようになったため、CTの比重が多くなってきていますね。

横井 当院も、CTを最初に使うようになってきています。慢性冠症候群の評価に関して、米国はこれまで負荷心筋シンチ中心で動いてきましたが、ISCHEMIA試験の結果を見て、これからもっとCTの重要性が増すのではとみています。

カテーテルwithコロナ

横井 次に先生方にお聞きしたいのはCOVID-19の診療への影響です。with コロナで慢性冠症候群の診断フローチャートは変わりましたか。

香坂 with コロナで、カテーテル手技の敷居が高くなっています。したがって虚血性心疾患に関しては比較的落ち着いてフォローをし、COVID-19が落ち着くまで待てる場合は待つといった話し合いもなされております。

阿古 そういう時代だからこそ、急性冠症候群を見逃さないような診療が、重要になってくるのでは思います。

横井 そうですね。そうなると病歴の聴取が大事でしょうね。外来に来た方が、急性冠症候群か、慢性冠症候群かを見分けるにはしっかり病歴を聞くことが大切かと思います。

香坂 そう思います。ISCHEMIA試験でも、ISCHEMIA試験のランダム化を待っているうちに急性冠症候群を発症した方がいました。期間を区切りながら、安定虚血性心疾患、慢性冠症候群ということを1カ月の間で確定させるという手段を、ISCHEMIA試験は取っています。つまり、ランダム化するまでの2週間、1カ月が、安定していない方はエンロールされていません。実際の診療の中では、そういった方々は虚血の領域が大きければ大きいほど必ず出てくると思いますので、問診、あるいはいろいろなテクニックを使って見極める必要があります。

今後のISCHEMIA試験

松尾 ISCHEMIA試験を、症状がなければやらなくていいと解釈していいか、注意する必要があるのかなと考えています。無症状あるいは軽い症状の中にも重度虚血の方はいます。日常の診療の中でもそういうケースはたくさんありますし、症状がなければ、安定虚血性心疾患で、薬物療法でいいとは考えないほうがいいかと思います。

上妻 今松尾先生がおっしゃったこととても大事で、重症疾患が隠れていても無症状というのはよくあります。安静時にSTが下がっている方や、心機能が低い方はISCHEMIA試験には含まれません。現場ではそういう方もいらっしゃって、ISCHEMIA試験の対象と全く違うことを頭に入れて、そういった患者さんは引き続き血行再建の適応でいいのではと思います。

伊苅 本当にお話しは尽きませんが、時間なので締めくくりたいと思います。ISCHEMIA試験の結果を受けて、今後の血行再建のありかたについて、日本のデータ、医療の仕組みの中で考えていかなければいけないですね。しかし、結果に関わらず、ますます臨床の腕を磨いて、適切な治療をお届けするというCVITの役割は変わらないのかなと考えています。CVITとしてはこれからもいい診療を国民の皆さまに届けたいということで締めさせていただきたいと思います。

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