【試し読み】弘前大学大学院 木村正臣先生INTERVIEW「弘前大学・木村先生に聞く、High-Power Short-Durationの極意!飽くなき探求とチームの結束が前進をもたらす」

木村正臣
(弘前大学大学院医学研究科
不整脈先進治療学講座)

 弘前の地から、カテーテルアブレーション治療の第一人者として、名を馳せる木村正臣氏(弘前大学大学院医学研究科循環器腎臓内科学講座)。木村氏の日々研鑽してきた手技を見学しようと、多くのドクターが訪れるという。循環器分野、カテーテルアブレーションの道を探求したきっかけやその経緯、High-Power Short-Durationによる手技時間の短縮に向けた取り組みなどについて、大いに語り尽くしていただいた。

 

 

  

教授の背中を追ってアブレーションの道に

インタビュアー
林健太郎
(弊誌編集委員)

林 本日は、カテーテルアブレーション治療の第一人者で、弘前大学の木村先生をお迎えしております。特に手技の注目度が高く、全国のドクターが木村先生の手技を学ぶために、見学に来られていると聞きます。最近では、バーチャルリアリティーを使った手技などでも、木村先生のやり方をモデルにされていて、非常に注目が集まっているところです。
 まずははじめに、EPS(心臓電気生理学的検査)やカテーテルアブレーション治療の分野、その道を選んだ経緯について教えていただきたいと思うのですが。

木村 僕が所属している講座の前任教授である奥村 謙先生がこの道を選んだきっかけになったと思います。プロフェッショナルの手技を、ずっと間近で見てきました。学生の頃から興味があったかというとそうではありません。心臓に興味があり、とりあえず、循環器の分野に進もうとは考えていましたが、心臓電気生理学が「本当に面白い」、と感じたのは目の前でデルタ波が消えるというアブレーションを見たのがきっかけです。それまでは、外科的な手術でケント束を切っていましたから。前述の手技を目の当たりにして、“これはすごいことが始まったな”というのが最初の印象でした。さらに3Dマッピングとの出会いです。初めて見たとき、“なんだ、これは!”というのが正直なところで、衝撃が走ったのを覚えています。そして、あるとき中川 博先生の講演を聞く機会があり、開心術後心房頻拍に対してCARTO を用いてマッピングを行い、見事にアブレーションで治療できたという講演を拝聴したときに「これがやりたい!」「自分でやれるようになりたい」と心が振るわされたことも、原動力になりました。

林 「好きこそ、ものの上手なれ」ではないですけれど、不整脈の分野は木村先生にとって、アブレーションが面白かったということですね。続いて、アブレーションの適応などについてお話を伺っていきたいのですが、今後のAF(心房細動)のアブレーション適応、特に無症状の患者さんへの適応については意見が分かれるところであると思います。先生は先日publishされたCABANA試験の結果も踏まえてどのようにお考えですか?

AFに対するアブレーションの適応は?

木村 非常に興味深い結果であったと思います。おそらく多くの人たちが、もっとポジティブなデータが出るだろうと思っていたのではないでしょうか。 確かに無症候性のAFをどうするのかというところと、もう一つは高齢者に対し、どこまで追いかけていけるのかという2つの難しいポイントがあります。有意差が出なかったというのは逆にいえば否定的であるというデータではありません。症例によっては有効な人もいるし、そうでない人もいます。だから、その中から有効な人を拾いあげる必要があります。有意差が出なかったということは、統計的な問題ですから個々の患者さんにしてみれば「やってはいけない」ということではありません。症例ごとに検討する必要があり、おそらくそれは患者さんとドクターとの話し合いであり、あるいは個々の症例の症状や背景、活動性が大きいのではないかなと、解釈しています。

林 なるほど。どうしてもマスで見てしまうと有意差はありませんが、その中には必ず有効な人はいるはずなので、そういう人にはアブレーションが適応になる、ということですか。

木村 そうですね。

林 無症候、高齢者のロングパーシステントはあまり適応にならないのかなと思いますが、ショートパーシステント、PAF(発作性心房細動)、それぞれ無症候の場合、先生は何歳くらいの方をカットオフにされますか。

木村 CABANA試験でも若い人のほうが有効であることが分かっており、高齢になれば、その有効性が低下してしまうのは当然でしょう。ある程度の年齢というのは多少考えてもよいと思います。僕らも、70歳半ば以上の高齢者に対しては、リスクとベネフィットを考慮し、本当に必要のある人をピックアップしていくと思います。そういう意味では症状の強い方や心不全傾向の方に限定されるかもしれません。

林 基礎疾患も、特に脳梗塞や心不全がなくて症状もないという人の70歳半ばが一つのラインという感じですかね。

木村 見た目年齢もありますね。この人は60歳代に見えるな、という人であれば、あえてやめましょうという話にはならないと思います。むしろ積極的に介入を考えると思います。そのあたりは、多少なり幅を持たせてもよいのではと思っています。

林 そうですね。見た目の年齢は確かに大事です。僕も見学に行かせていただいて、非常に手技がスムーズで早いという点には驚かされました。そのあたりの部分を参考にしたいと見学に来られる先生が多いと思います。手術時間の短縮など、先生ご自身が気を付けていること、クライオバルーンアブレーションとRF(高周波)アブレーションの先生のやり方について、簡単にご紹介いただければ、と思います。

木村 PAFであればクライオバルーンあるいは高周波のどちらでも十分短時間で対応できると思います。多少オペレータによって差はありますが、オペレータ間の差が少ないのはクライオバルーンでしょう。ただ、やはりアブレーションの手技自体が短くなっており、特に当院ではHigh-Powerを使うようになってきて、その差がどんどん狭まってきています。実際に「肺静脈隔離」だけをみるとRF(高周波)とクライオバルーンの間に差はない、という印象です。8〜9割の方はPVI(肺静脈隔離)だけで十分ですから、肺静脈の解剖がとくに問題なければクライオバルーンでいきますし、拡大した左房やirregularな解剖のPVであればRFを選択します。後はPACのP波の波形からnon-PVがありそうであればRFを選択します。persistent(持続性)については当院では基本的にRFで施行していますが、最近の流れでは、とりあえず1st sessionはクライオバルーンでもいいのではないかという意見もあります。僕はどちらでもいいと思っていますが、より汎用性が高いという意味ではRFで対応していこうと考えています。re-doではRhythmiaシステムを使ったり、あるいは別のシステムを使用してPV以外を調べたりしています。現在は多くのシステムが使用できるようになり、逆にどのシステムをどのように使いこなしていくかという難しい面があります。どのシステムを使用したとしてもPVIの部分での時間差があまりないようにすることが必要です。それでRFの手技をシンプルにしようというのが僕らの考えで、そこに“時短”という発想が加わりました。バルーンだけでこれほどの成績が出てくるのであれば、RFでも同じく、よりシンプルにしたほうが合併症の面で、患者さんの負担にならないのではないかと考えたわけです。例えば、8~9割の人が満足する、というのではなく、100%を目指すとなれば、話は変わってくると思います。過去のデータからも時間をかけてやればやるほど合併症のリスクが増えてきます。低リスク、低侵襲で手技を終えるというのもひとつの選択肢だと思います。

3Dマッピングの手技時間

林 先生の病院では現在、クライオバルーンアブレーションは3Dマッピングを使用しないでやられているかと思いますが、CARTOはバージョン6になってvoltage mapを作っているのを以前に拝見したのですが。今は、どのようにしていますか?

木村 mergeをするためにPentarayで左房のチャンバーを最初に描いています。それと3DCTをマニュアルですが、mergeして、そのmergeしたCTをガイドにアブレーションをしていきます。

林 それでだいたい、クライオバルーンアブレーションが入退室で何分ぐらいですか?

木村 クライオバルーンアブレーションでは手技自体が40〜45分くらいで、入退室を入れると1時間ぐらいになります。そうすると当院の朝の入室は8時45分ですので、午前中に4件目が始まります。

林 RFアブレーションの場合はどうでしょうか?

木村 RFでも1時間程度ですがISP負荷まで行うと入退室で80分程度です。

続きはCATH LAB JIN春号(Vol.2 No.2)で!

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