【試し読み】東京慈恵会医科大学附属病院循環器内科 山根禎一先生 INTERVIEW 質の高い心房細動アブレーションを目指す! ~発作性から持続性まで~

東京慈恵会医科大学附属病院循環器内科 
山根禎一


インタビュアー
林健太郎
(弊誌編集委員)

山根禎一氏(東京慈恵会医科大学循環器内科)は最先端かつ安全な医療をポリシーに掲げ、教授を務める循環器内科では多様な疾患に高水準な治療を可能としている。また、日本不整脈心電学会カテーテルアブレーション委員会委員長を務め、先日のカテーテルアブレーション研究会2018(沖縄)でも大会長を務めるなど、アブレーション領域を束ねる立場でも活躍している。患者と真摯に向き合い、またそのための研鑽を今なお惜しまない氏に、数ある選択肢の中でアブレーションの道を選んだ経緯や、昨今の臨床試験の報告やデバイスに見る心房細動アブレーションの方向性、自院での治療の有効性・安全性における工夫、また若手ドクター達に贈る手技上達のヒントを伺った。

ジェネラリストからスペシャリストへ。2年間の留学は「非常にエキサイティング」だった

 本日は、東京慈恵会医科大学教授の山根禎一先生にお話を伺います。山根先
生はアブレーションの第一人者でいらっしゃいますが、まずは先生が電気生理やアブレーションの世界に入っていった経緯、それから電気生理やアブレーションの魅力をお話しいただければと思います。

山根 大学を卒業して最初の目標はジェネラリストだったんです。何でもできる医者になりたいということで、東京厚生年金病院に就職しました。そこで普通の内科の研修を5年間やる中で、自分のやりたいことが少しずつ絞られてきて、自分は循環器が好きかなと感じました。
 通常の虚血のカテーテルを主な仕事としてやっていたんですけれども、時々そういう中で不整脈、VTやPSVTの患者さんが入ってきて。私が研修していた頃はまだアブレーションの時代ではありませんでしたが、その不整脈のEPSを解析することの面白さに徐々にひかれていきました。anatomyだけではなくて不整脈の電気生理、心臓の中の電気の流れというものを想像する、診る、という面白さですね。それで最終的な方向性としては電気生理を専門とした不整脈専門の医者を目指したということです。
 今は比較的狭いことを専門にやっているので、当初私が目指した何でもできるジェネラリストからは本当に思ってもいない道に来たんですけれども、最初にジェネラリストを目指して、そこから最終的に絞られてきたことが自分としては良かったと思っています。

 先生がこの世界で大きく活躍されるきっかけになったのがBordeaux大学への留学だったと思います。その頃はAFアブレーションの創生期で、まさにBordeaux大学がその最先端を行っていましたが、先生がBordeaux大学で感じてこられたことや、日本に帰ってきて続けておられることをお聞かせいただけますか。

山根 私が留学していたのは1999年から2001年までです。心房細動の治療が開発される現場に居合わせたので、非常にエキサイティングな2年間を過ごしました。
 まだその頃は、今では当たり前になっている肺静脈隔離術がなかったんです。その中で、ちょうど2000年の初めにLassoカテーテルが開発されたんですね。そのカテーテルを開発したHaissaguerre教授の頭の中では、肺静脈隔離術というのができあがっていたということです。天才は、欧米の一流施設を含めた世の中よりもさらに何歩も先を読んで、この心房細動の攻略法を考えている。それには感動して震えましたね。
 Haissaguerre教授からの直接の教えだけではなく、その着眼点、自分たちがトップなのだという誇り、そこから生まれるアイデア、それを実現する実行力。全てにおいて本当に大きなものを教えてもらいましたし、今でもそれを目指してやっています。

CABANA試験は「ポジティブな結果」

 ありがとうございます。ここからはより実践的な内容に関してお伺いします。まず適応に関して、最近発表されたCABANA試験の結果も受けて、今後の心房細動アブレーションの適応をどうお考えですか。特に無症状の患者さんや、持続性の心房細動の患者さんに対しての適応はどのようになっていくべきでしょうか。

山根 非常に重要なポイントですね。まず今年の5月にHeart Rhythm Societyで発表されたCABANA試験の結果はずいぶん大きな議論になっていると思いますが、私はこれをポジティブな結果だと受け止めています。
 あの試験では、単純にintention-to-treatで分けた時には、薬物治療とアブレーション治療の2つの群で予後に差は出なかったのです。ただその内訳としては、薬物治療群とアブレーション群のクロスオーバーがかなりあって、最終的にはon treatmentで、どちらの治療を受けたかということで2群に分けると、アブレーション群のほうが有意差を持って予後が良かったという結果でした。ですからあのstudyに関しては、まだ議論もあるでしょうが、アブレーションをしたほうが患者さんの予後を改善できるのだと私は受け止めています。
 もともと心房細動のカテーテルアブレーションの適応は症状を抑える治療ということで始まっており、今もそれがメインです。ですから欧米も含めてどこの学会でも、原則的には有症状であるということが第一です。
 ただいろいろなstudyで、心房細動が決して良性だと言い切れない、そして心房細動の患者さんは心房細動がない患者さんと比べると予後が悪いという結果がいくつも出てきています。それを踏まえて、患者さんの将来的な予後を改善するということを考えれば、無症状であってもアブレーションの適応があるかもしれないというスタンスでやっています。
 もちろん、お一人お一人の患者さんをよく考えなくてはいけないですし、ガイドラインももちろん重視しますが、そのガイドラインも少しずつ無症状の方に適応の間口を広げているのは間違いないと思います。
 一方で、ご高齢で無症状の心房細動の患者さんを考えたときには、今カテーテルアブレーションの手術数がすごく増えてきている中で、本当に必要かどうかをもう一度考えるべき時期に来ているんだろうとも思います。

 無症状の心房細動で発作性の場合と持続性の場合、先生はそれぞれ何歳ぐらいまでアブレーションを考慮されますか。

山根 無症状の発作性の場合、ご本人が希望すれば80歳ぐらいまででしょうかね。無症状の持続性の場合には70歳あたりを境にするかもしれないです。

 それはやはり、CABANA試験などの予後のデータや脳梗塞を減らすというデータを受けて、年齢が上がってきているということですか。

山根 上がってきていると思います。

増加するアブレーションをまとめるためのJ-ABレジストリ

 そのような状況の中で、アブレーションの数はどんどん増えていて、その大半が心房細動アブレーションというのが現状です。アブレーション委員会の委員長としての立場から、現在のアブレーション治療に期待していること、もしくは危惧されたり心配されたりしていることはございますか。

山根 本当に多くの一昔前は難治症例であったものが、今は治療可能になってきています。その適応は今後もますます広がると思いますので、現在のカテーテルアブレーションは、本当にいいところまで来ています。
 ただ一方で、今は日本全体でのカテーテルアブレーションの総数が年間7万件を超えている状況です。学会としてきちんと日本全体をまとめ、きちんとしたガバナンスを効かせているのかどうかということがすごく見られている。
 だからこそJ-ABレジストリを始めたわけです。ドクターお一人お一人が主人公となって、それに参加していただく。そして日本のアブレーションをますます盛り上げていってほしいと感じています。
 危惧していることはその逆で、侵襲的な医療行為をやりっ放しということが許されない時代になってきています。ですからそれを登録しなければいけない。でも患者さんの治療をやりっ放しの施設がまだあるということです。
 あとは、カテーテルアブレーションの診療報酬は比較的高い状態を維持できていますが、学会がきちんとした役割を果たしていないと下げられてしまうので、そこもお一人お一人の先生にきちんとやっていただく。全てのアブレーションに関わっている先生方に責任感を持ってほしいといつも思っています。

続きは、CATH LAB JIN冬号(Vol.2 No.1)にて

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