【試し読み】座談会 心臓外科×循環器内科「PARTNER3試験は大動脈弁狭窄症治療をどう変えるか?」

原 英彦
(東邦大学医療センター大橋病院)

 2019年3月のACCにおいて、PARTNER 3試験の結果が発表された。今回「CATH LAB JIN」ではこのトピックについて、原 英彦先生(東邦大学医療センター大橋病院)を座長に、内科と外科双方の視点から語って頂いた。

 今回の試験は2016年3月から2017年10月にわたって行われ、外科手術においてLow RiskとされたSTSスコア4%未満の重症大動脈弁狭窄症患者1,000人を、Sapien3弁を使用したTAVI群503人、手術群497人に無作為に割り振った。患者はアメリカ65施設、日本3施設、カナダ1施設、オーストラリア1施設、ニュージーランド1施設から登録され、このうち実際に治療を受けたのはTAVI群496人と手術群497人。これらを対象として予後の解析が行われた。

鳥飼 慶
(獨協医科大学埼玉医療センター)

 主要評価項目のうち、1年の死亡率はTAVI群1.0%に対し手術群2.5%で有意差は認められなかったが、脳卒中はTAVI群1.2%に対し手術群3.1%、再入院はTAVI群7.3%に対し手術群11.0%と、TAVI群の方が有意に低かった。また30日の新規心房細動の発現率はTAVI群5.0%に対し手術群39.5%、入院期間はTAVI群3日に対し手術群7日となっており、この2項目に関しては特に顕著な差が出ている。重症の血管合併症、新規ペースメーカ留置、中等度ないし重度の弁周囲逆流においては、有意差は認められなかった。ポジティブなデータが出ている一方で、TAVIは耐久性への疑問など新しいデバイスゆえの問題も抱えている。今回の結果が何を意味し、それを受けて国内の動向はどのように変わっていくのか。読者の疑問を立体的に解き明かす座談会が実現した。また2つの科が交わる場ということで、今後重要となっていくハートチームの体制についても触れて頂いた。治療の選択肢は増え、他科との協力は不可欠となっていく。患者さんによりよい治療を提供するために、築いていくべきハートチームの理想とは。これからの未来につながる、大きなヒントをお届けする。

佐地真育
(榊原記念病院)

 東邦大学医療センター大橋病院の原でございます。本日は内科の先生お二方と外科の先生お二方をお迎えさせていただきました。3月のACCでは、PARTNER 3とLow RiskのEvolutのデータが出ました。エキスパートの先生方のご意見を、読者の方々も知りたいことと思います。実際にTAVIを行われている先生がどう捉えているのか、TAVIはこの後どうなっていくのかが最も興味深いところでしょうから、それらを中心にお話しいただければと存じます。まずPARTNER 3の結果としては、MACEで有意差がつき、しかし死亡だけでは有意差がなく、そして死亡とストロークだと有意差がつきました。その解釈も含めて、お1人ずつ結果を見て感じたことをお話しいただきたいです。内科の先生の視点と外科の先生の視点では違うものになるかと思いますが、いかがでしたか。

井上堯文
(東京大学医学部附属病院)

佐地 Low Riskの結果はIntermediateの頃から予想はしていて、そのままの結果が出たと感じました。以前は手術のリスクからTAVIを選択するという流れがありましたが、今後は手術リスクにかかわらずTAVIを選択する人が多くなると思いますので、冠動脈疾患や心房中隔欠損症のように大動脈弁狭窄症もTAVIファーストで考え、TAVIが困難な人はAVRに回るという流れが今後できていくのではないでしょうか。

金子 やはりstudyを見ると平均年齢74歳で、STSが2%を切る程度。そうした条件下ですとおおむね予想の範囲内だったと思います。ただ考えなければならないのは、例えば、PARTNER 3ではBicuspid ASの方は入っていないという点です。またLow Riskと言っても年齢で考えると、やはり日本人は欧米人に比べ、特に高齢になればなるほど平均余命が長くなってくるので、それを考えると長期の耐久性は気になるところです。

金子英弘
(東京大学医学部附属病院)

 そうですね、実際にmoderate to severe PPMのデータが載っていますが、関心の1つかと思います。カテの手技にあたっては、リスクが少なければより容易にできますので、循環器内科側としては成績が良好かよりもLow Riskか否かに注目していました。

井上 先生方がおっしゃるように、今後は、今の日本のCABGとPCIのような比率へ移っていくのではないかと感じるのは、内科、外科にかかわらず同じでしょう。私は、逆にどういった人が外科の対象になるかに関心を持ちました。金子先生がおっしゃったように狭小弁輪やbicuspidに加えて、重要と考えているのはAF合併例です。外科手術だとAFに対するマネジメントも同時に可能となります。
 具体的に言えば、左心耳に対するアプローチは現状において外科手術が多少選択肢として有利かと考えました。それ以外のLow Riskのものに関しては、ASに対するTAVIとSAVRも今後は、CABGとPCIと同じようになっていくのは必然の流れであろうと思います。

 ありがとうございます。この後鳥飼先生にお話しいただきますが、井上先生がおっしゃられたように確かにAFの件もそうですし、内側から縫ってきっちりと止めてもらえれば左心耳閉鎖は安全な方法かと思います。

井上 A弁の際には左房を開けないので外から切除という方法になりますね。コストとテクニカルの問題はありますが外からが良いと思います。

 そういった意見もあるということですね。狭小弁輪の件については、同じ23mmを入れた時に同じくらいの弁口面積の患者さんですと、TAVIのほうが外科弁よりもEOAを改善できるというデータがありますよね。ですからその辺も含めて、サージカルにvalveを入れると逆に狭小弁輪の問題があるのかと思います。

鳥飼 今回のPARTNER 3はLow Riskの患者さんに限っており、逆にCABGのような複合の手術も入っていますが、それでもデータがだいぶよくなってきましたね。手術手技がよくなったとは限らないのでしょうが、データとしてようやくまともな比較対象になったと言えるでしょう。

TAVIには何が足りないか?

 外科医の先生の立場からCABGとPCIのようになるのではないかと実際におっしゃっていただき、やはり外科の先生でもこのように考えておられる方がいるのだと認識させていただきました。しかしすべての面においてTAVIが絶対的にいいかといえば、まだ出ていないデータもありますよね。長期のデータをはじめ、外科医の先生の立場からTAVIに不足しているデータについてご指摘はございませんか。

井上 1つは1年後のARの頻度が20%強あるというのは、mildとはいえ高いと感じました。サージカルなAVRにおいても残存のARは長期の予後を悪化させる懸念がありますので、それがTAVIにおいて今後どう効いてくるのかは見ていきたいと思います。入院期間に関して言えば、サージカルもスムーズに進めば80代でも1週間で退院される患者さんもおられます。ただ高齢者ですと肺炎や、創部の感染、縦隔炎など、合併症を起こした時のリカバリーは若い人に比べて遅いのは否めません。その点はPCIとCABGと同様、カテーテル治療が有利になるかと。

鳥飼 やはりdurabilityの問題ですよね。外科のデータがおおよそ10年、15年、20年という弁関連の成績を出しているのに対して、まだTAVIは出て10年ほどでどこまで見ればそのdurabilityは良好と言えるのかという点がまず1つ、議論の焦点になるかと思います。次に費用対効果の問題です。特に再入院を抑えられる点は有用で、最終的には入院のコストが高い分ひっくり返せる。今回のデータは費用対効果にさらに追い風になると思っています。
 もう1つ問題になるのが新規のペースメーカー植込み率だと思っていまして、PARTNER 3では有意差は出ないという話も出ていましたが、率としては高いですよね。日本ではAVRでペースメーカーを入れて帰る人はまずいないでしょう。そういった観点から、今後Low RiskのケースごとにTAVIを適用していった場合の影響は懸念していますね。

 確かに海外のデータを見ると、A弁の術後は5%台の患者さんがペースメーカーを入れて帰っています。日本ではあまり見ないですよね。先ほどARのお話も出ましたが、循環器内科からTAVIを長期的に見て、どこが、何が足りないかという質問をしたいのですが、よろしいですか。

佐地 ペースメーカーは鳥飼先生がおっしゃられたようにTAVIの一番のアキレス腱で、デバイスの改良が待たれますね。パラリークを抑えることと刺激伝導系を圧迫することは相反することなので、新しいテクノロジーを駆使してペースメーカーレートを下げなければなりません。
 Durabilityに関しては最近NOTIONの6年の結果が出たのですが、サージカルのA弁のほうが劣化が早いことを示唆するデータも出ています。私も外科弁は15年、TAVI弁はもしかしたら5~10年程度だろうと思っていたのですが、ランダマイズすると案外に同程度というデータが出るのかもしれないと感じ、患者さんにはあまり偏った意見は言わないようにしています。ですので、あまりTAVI弁が悪くなるとは思わなくてもいいのではないかと。

金子 TAVI急性期の合併症は非常に少なくなりました。これはイメージングあるいはデバイスの進歩だと思います。そのなかで私が日本人の患者さんにTAVIを行う上で一番懸念しているのは、冠動脈閉塞です。日本のデータを見るとほとんどの合併症の発症率は海外の半分程度ですが、冠動脈閉塞だけはむしろ日本のほうが多い。小型の大動脈弁複合体や弁尖の石灰化などが影響しているのかなと思います。また、ペースメーカーに関してはPARTNER 3では有意差はなかったですけれども、やはり率が高いのは気になります。ペースメーカーを入れた方は術後のBNPの改善が悪いというデータもあります。また、TAVI後のAR、特に軽度のARが予後に影響するかという点は未だに議論が続いています。

弁のサイズはジャストであるのが正解

 長期的な予後のお話をお伺いしましたが、先ほどARの問題点もご指摘いただいたほか、ペースメーカーのお話もありました。PPMに関してのご意見とTAVIの問題点あるいは利点について、内科の先生方と外科の先生方では視点が違うのかと思うのですが、どうですか。

鳥飼 外科手術ではこれぐらいのサイズの弁を入れようと思っても、実際にはSTジャンクションの大きさや石灰化などが影響してしまい、やむを得ず小さいサイズの弁を入れることがあります。それが体格に見合わないと予後にインパクトを与えるのではないかと、今まで議論してきました。患者さんの弁輪径は決まっていますから、それに対してジャストなサイズを入れるのが正解だと私は考えていますね。

佐地 PPMはLow Riskでも言及されていますが、日本人は体格が小さい人が多いので、PPMも少ないと思いますし、海外で言われるほど日本では問題にならないのではないかと思います。

井上 鳥飼先生に伺いたいのですが、当院では19mmもよく使います。逆に、ある他施設の先生の講演では、19mmは使わないという意見を聞きました。私見としては、先生がおっしゃるようにその患者さんのもともとのジャストの弁輪サイズが19mmであるならば、19mmで構わないと思うのです。ただ、今後Valve in Valveが一般的なオプションとなってきたときには、次回以降の治療まで考慮に入れた弁サイズの選択は必要となろうかとは思います。 鳥飼 井上先生のおっしゃるように、きれいな弁輪を出してそれが19mmであったところを、弁輪拡大するというのは私も反対です。それが生まれながらにして患者さんたちが与えられた大きさなのだろうと。それを弁輪拡大してまで入れるのが本当に正しいのかどうかは疑問です。

続きはCATH LAB JIN夏号(Vol.2 No3)で!

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